実は、オーバードライブとディストーションの記事へのアクセスが多いようですので、今回は、少し補足的な記事を書こうかと思います・
・ゲインとは
海外オークションなんかの売り文句でMy Loss, Your Gain (私の損失はあなたの利益、つまりお買い得です)なんて見かけますね。 ゲイン(gain)とは入力と出力の比(利得)のことです。ピックアップで拾った電気信号は、電磁誘導で発生するものですので電圧が低いので高い電圧に増幅します。電気信号を増幅する電子回路をアンプリファイア(アンプ)と呼びます。ちなみにゲインとは入出力比のことなので、パッシブピックアップの場合は電気信号を出力するだけですので、ハイゲインと言うよりハイアウトプットと言った方がより正確な表現だと思います。
・クリップとは
例えば、真空管アンプでは真空管で電気信号を増幅しますが、これはある限度を超えるとそれ以上正確に信号を大きくできず音が潰れ(割れ)ます。これをクリップ(切り取られる)と言います。クリップするレベルが高く、ゲインを上げても歪みにくく、頭打ちしにくいことを頭打ちまでの余裕がある、つまり頭の上の空間(ヘッドルーム)が広いと言います。歪みが発生しにく大型真空管アンプなどを意味する時に使われたりします。
・ハイゲイン
真空管アンプでしたらクリップが発生するレベルは同じですから、ゲインが高いほど元の波形からの歪みが大きくなります。ディストーション回路では、増幅された信号をダイオード等に通します。ダイオードは一定の電圧以上の信号を通しませんので、一定値以上の信号はクリップされます。ダイオードの種類によってその電圧は異なりますので、低電圧のものは良く歪みますが音量は小さく、高電圧のものは歪みは浅く音量は大きくなります。MXRのディストーションプラスは前者で、DODのオーバードライブプリアンプが後者なのは、有名な話です。
・ディストーションのレベル
真空管アンプの場合、同じ信号を元波形と比べてみると、ハイゲインの方が元の信号に比べて、よりつぶれています。元信号との差が歪み(ディストーション)ですので、ハイゲインの方が、歪みのレベルが高くなりますので、ハイディストーションと言うことになります。ディストーション回路の場合は、ゲインとディストーションの関係は、逆になりますので、注意が必要でしょう。それでは、歪みのレベルを同じにしてしまえば、真空管アンプもオーバードライブもディストーションも全て同じ歪みになるのでは無いか?イコライザーで音域調整すれば大差無いのでは無いかと思いませんか?
実際には、深めのオーバードライブと浅めのディストーションでは、歪みの量が同じでも質感が異なります。それは、クリップの仕方が異なるためで、ハッキリとクリップするタイプをハードクリッピング、緩やかにクリップするタイプをソフトクリッピングと読んだりします。アナログの電気信号は、回路や素子の違いによって、クリップの仕方が異なり、波形も変化してきます。現代では、オーバードライブでも良く歪むものもありますが、歪みの質感がディストーションとは異なると思います。その違いは、回路の違いが大きいように思います。