オーバードライブとディストーションの違い
歪みペダルが多様化した現在では、オーバードライブとディストーションに明確な違いは無いのですが、元々は回路的な違いから区別されています。
ファズの回路は、一般的にトランジスタと抵抗とキャパシタを組み合わせたディスクリート回路で構成され、トランジスタ部分で歪みを発生します。しかし、MXRのディストーション+は、OPアンプで増幅した信号をダイオードに通すことで歪みを発生させる画期的な方法を用いてます。
ダイオードで歪ませる方法は、ビッグマフが先行していましたが、集積回路(IC)を用いたことで、従来のディスクリート回路を小型化し、コンパクトなエフェクターを誕生させます。この回路は、ダイオードの位置により2つのタイプに分かれており、ハードクリッピングのものをディストーション、ソフトクリッピングのものをオーバードライブと分けることが多いです。
ダイオードの位置の違い
ディストーションは、単純に増幅後の信号をダイオードでクリッピングさせます。そのため信号は、ハードにクリップし荒々しい歪みになります(ハードクリッピング)。ところが、BOSSのOD1はクリンピングダイオードを帰還回路に組み込むことで、ソフトなクリッピング、よりナチュラルな歪みを得ることに成功します(ソフトクリッピング)。また、ダイオードの組み合わせ個数を変えることにより真空管アンプと同じような非対称クリッピングとした点は、素晴らしい発想と言えるでしょう。一方、IBANEZ(MAXON)のチューブスクリーマーは、帰還回路にダイオードを組み込むのはOD1と同じですが、ダイオードの組み合わせで対称クリッピングになっています。アイディア的にはむしろ退化していますが、独特の周波数域と洒落たネーミング、そして有名ギタリストの使用で伝説のペダルとなりました。
ディストーションペダル
ディストーション型回路(ハードクリッピング)を見てわかるように、歪み(DIST)と出力(LEVEL)が影響しあうので、DISTを下げると出力も下がるのでクリーンブースターにはあまり適しません。オーバードライブ型回路では、クリッピング回路の位置が違うので歪みを下げても、あまり出力は変わらないのでブースターとしての使い勝手は良いようです。
ダイオードが、信号をクリップすることで音は歪みますが、歪みの大きさや形はダイオードの種類にも影響されますので、同じディストーション型回路でもモデルによってそのサウンドは大きく異なります。古典的なMXR、DS1、RATは、それぞれ個性的で、現在でも人気の高いペダルだと思います。有名なKlonは、歪の回路自体はハードクリッピングなのは興味深いです。ディストーションに関しては、JHSペダルでも紹介されています。
現代の歪みペダル
現在では、ダイオードの種類や周波数域のコントールも進化していますし、ハードクリッピングとソフトクリッピングを組み合わせたり、FETトランジスタを用いた新しい回路も登場、表面実装といった新しい技術で低価格や小型化したペダルもたくさん発売されています。
現代のペダルでは、オーバードライブもディストーションの違いはあいまいになっているように思います。また、よりアンプライクに進化し、アンプ以上に反応が良いようにも思います。