A Different kind of truth

初期ブラウンサウンドはファズなのか?

歪みと倍音とは

よく、歪ませると倍音が増えるというけれど、それって正しいんでしょうか?

・歪みとは

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そもそも歪みとは、電気信号が電圧の限界を超えてしまい波形が欠けてしまう(クリップ)してしまうため、音が潰れてしまう、歪んでしまうことです。

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歪み方によって、大幅にクリップしたり、滑らかにクリップしたりと違いはありますが、波形が頭打ちになります。上の図は歪みの説明ですが、ソフトクリッピングではゆるい山の部分に違う周波数も加わっていると言えなくもないですが、基本的に倍音が増えているようには見えません。では、なぜ倍音が増えていると言う人がいるのでしょうか。倍音が増えていると言う人の多くは、サイン波を周波数分析して奇数だと偶数だと説明しています。

・周波数分析とは

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周波数分析とは、簡単に言うと色々な周波数が組み合わさった波形をどの周波数で構成されているか、数値計算することを言います。上の図は、左の波形が元の波形で、右の図はその構成を示したものです。1次の波形、2倍の波形、5倍の波形を組みあわると左の波形になることを意味しています。左の波形の関数を周波数ごとの関数に変換することをフーリエ変換と言います。

 ・歪みと倍音

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そもそも楽器にとっての倍音とは、物理的に波長が変化して生じるもので、基本的に整数倍の波形のみで組み合わされることになります。ギターの弦は、押弦部とブリッジ部が固定の両端固定なので、上の図のような整数倍の振動のみになります。管楽器などは、片端固定な奇数倍音で構成されます。一方、歪みで得られた矩形波フーリエ変換して得られる倍音は、数学的に歪み波形を得るための単なる周波数で倍音としての意味はありません。歪みの波形と倍音で構成された波形とは、似て非なるものです。波形を合成するタイプのシンセサイザーとPCM音源の違いは明白でしょう。

本来の倍音のみで構成される波形は有機的で美しく感じられますが、歪みで得られた波形は倍音で合成された波形とは微妙に異なるため、人によっては不快に感じられます。絶対音感のある人が、歪んだギターの音が嫌いなのはそれを聴きわけているのでしょう。また、高いギターは倍音が多く、高いピックアップは倍音を良く拾うのですが、歪ませてしまうと歪みによる倍音のようなもので本来の倍音は失われてしまいます。高級ギターやピックアップを否定する人は、きっと歪ませすぎなのでしょう。